ローマ編4(フィレンツェからローマへ)
マリオ・ブルネロ
Z子の悲劇 ~ローマ編4~
フィレンツェからローマへ向かうその日の朝、Z子とぼくは、映画「ローマの休日」のキュートな演技で世界の男性を魅了したオードリー・ヘップバンの死を知ったのでした。ぼくも高校生の時この映画を見て以来、いまだにオードリーの魅力に取りつかれている者のひとりです。(正月にBSで放映された「昼下がりの情事」も最高でしたネ!)そのオードリーの死はショックであったものの、あの映画の舞台となったローマへ向かう日に、その主演女優の死に巡りあう奇遇さに、ぼくとオードリーの運命的な結びつきを感じずにはいられませんでした!? とはいえ、この後のローマへの旅は映画「ローマの休日」の思い出シーンをたどる旅となるのです。
Z子とぼくがフィレンツェのRifredi駅から乗り込んだ超特急列車は、思ってもみなかった豪華客車だったのです。車内は広くて明るく、ゆとりある座席の配置は高級感があり、乗っているお乗客たちはエリートビジネスマンやエグゼクティブ風の人ばかりでした。そして、軽食ではありますが、スチュアーデス風の乗務員による食事のサービスまで付いていたのです。ローマまでの90分間、ハイクラスの気分に浸ることができました。
食事も済んで車内を見回したときに、思いがけず真っ赤なチェロ・ケースが目に入ってきました。「音楽をやっている人も乗っているんだ。」とわかり、ぼくの胸にある思いが浮かんできました。ローマに着いたら楽譜を買いに行きたいと思っていたZ子とぼくですが、実は、ローマのどこに楽譜屋さんがあるのか知りませんでした。観光ガイド本に楽譜店は載っていないですものネ。イタリーには、RICORDIなどの有名な楽譜出版社もありヴィヴァルディや現代物や海賊版の出版社もあって、絶対行ってみたかったのです。そこで、「男のなのに真っ赤なケースなんて」と思いながら、赤いチェリスト氏にローマの楽譜屋さんをたずねてみる事にしました。
「あなたがローマで楽譜を買うのはどこですか?その楽譜屋さんの場所を教えてくれませんか?」と聞いてみたのでした。そして、教えてもらったのは、ヴェネツィア広場のRICORDIでした。おかげで、Z子とぼくはヴェネツィア広場へ行って、RICORDIで念願の楽譜を購入することができたのです。(Topの写真は、赤いチェリスト氏の書いてくれたメモです。)
ところで、ローマに着いたZ子とぼくはオードリー・ヘップバンが亡くなった日の新聞を買ってみることにしました。イタリー語が堪能でないZ子とぼくには、新聞なんて何の役にも立たないのですが、オードリーの亡くなった日にローマに居たという証のために買ったのでした。(写真右上)そして、その新聞の記事の中に先ほどの赤いチェリスト氏の大きな写真を見つけたのです。(写真左)ローマでのチェロ・リサイタルが新聞に大きく取り上げられたその人の名は、チャイコフスキーコンクールの優勝者でイタリアを代表するチェリスト=マリオ・ブルネロ氏だったのです!
知っていれば、サインと握手くらいはお願いしたのに....。手元に残ったのは、ホテルのメッセージ用紙に書いたメモだけ・・・・・。