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フィレンツェ編7(前編)

アメリゴ・ヴェスプッチ空港2


Z子の悲劇 ~ フィレンツェ編7 の後編~

目的を失ったZ子とぼくは、暇つぶしに公衆電話から日本に電話してみたり、キオスクの売店でショッピングしたり・・・。でも買ったものは、絵はがきとキャンディくらい。ベンチにも相変わらず空席はなく、時間をもて余したZ子とぼくは、ブラブラと空港ビルの中や外を歩き回っていましたが、チェックイン・カウンターの向こう側の待合室(つまり通関しないと入れないガラス張りの部屋)に行くためのもうひとつの出入口の前に来ていました。そのドアには進入禁止=DO NOT ENTERのマークが力強く光っていて、カギがかかっているようでした。

ところが、遊び半分にノブを引いてみるとそのドアは開くではありませんか。もう2時間近くも立ちっぱなしのぼくは、Z子の制止も聞かず、進入禁止のドアの向こう側のベンチに座ってしまったのです。Z子も、やむを得ずぼくに付いて入ってきました。

誰もいない部屋のベンチに腰掛けて20分ほどした時、アナウンスが入りいよいよ搭乗の手続きが始まりました。Z子とぼくはすでに税関の外側にいるので(つまりイタリア国外に居ると言うことです)、スタンプをもらうために人の流れに逆らって外側からカウンターにパスポートを出したところ、中年の女性係官が大声を上げてぼくの手を捕まえたのです。「何故、中にいる?どうやって入った?」と聞かれ、「あのドアから入った。」と答えたら、Z子とぼくは逮捕され、若い男の係官と女性係官に引っ張られ暗い通路の奥に連れていかれたのです。

Z子とぼくは、暗く人通りがない通路の奥で、女性係官に激しい剣幕で怒られ、言葉もほとんど理解しないままただ頭をうなだれていました。更に、こんな不法侵入事件の発生を許してしまった若い男性係官もこっぴどく説教されていました。このときのZ子とぼくは「密入国者として留置場に入れられるんじゃないか!?」と、深刻に思っていました。それほど、ぼくのとった行為は重大なことだったのです。この期に及んで、初めてぼくは自分の犯した罪の深さを知りました。

ひとしきり怒鳴られた後、結局、Z子とぼくは、カウンターまで連れ戻され、パスポートにスタンプをもらって釈放されました。そして、予定のパリ便にも乗ることができました。ホッとしましたが、ほんとに危険な事件でした。

この旅では大きな反省と教訓を得ましたが、この件以外にも収穫があったのです。それは、エアー・フランスのEU路線の機内食が、格別に美味しいということです。2時間足らずのフライトでしたが、軽昼食に出てきたサラミとハムの盛り合わせ、3種類のチーズ、そしてパン、バター、ジャムのどれを取っても一級品なのです。超美味しいのです。特に生ハムとサラミは、大げさなようですが、これ以上の味のものに出会ったことがありません。ヨーロッパ内を飛行機で移動する人たちは、やはりエグゼクティブなのでしょうか。フランス国家のプライドを賭けて接待するものなのだと感じました。同じエアー・フランスでも、日本-パリ便にこんな美味しいものは出てきませんね!?


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